【前回までのあらすじ】
暑い。
第一話→老後に2000万円必要な時代のアリとキリギリス
第二話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス
第三話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス その2
第四話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス その3
第五話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス その4
第六話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス その5
第七話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス その6
第八話→【アリキリ】ついに現れたあの男… ~コストセンターとプロフィットセンターの話
第九話→【アリキリ】アリと副業
瞬間湯沸かし器
アリが「お向かい座ってもいいですか?」というと、クマバチ取締役は
クマバチ取締役「ああ!?(# ゚Д゚)」
と、すごい勢いでにらんできました。
アリ『えっ…!?!?クマバチ取締役って…ものすごい温厚だったはずじゃ…?!』
アリは困惑しました。
アリが知っているのは6年後のクマバチ取締役(社長)です。
当時のクマバチ取締役は瞬間湯沸かし器のクマバチと言われるぐらい、頭に血が上りやすい男(※昆虫)だったのです。
この直後に、クマバチ取締役は奥さんに離婚を切り出され、今までの人生を振り返り、傷心の中、長期休暇で向かったスリランカの奥地でスピリチュアルに出会い、瞑想を経て温厚さを手に入れるのですが、この時のアリにはわからない話です。
アリ「あっ、ありがとうございます!」
圧に負けじと、アリはクマバチ取締役の向かいに無理やり座りました。
クマバチ取締役「なんでここに座るんだよっ!違うところ空いてるだろ!」
アリ「くッ…クマバチ取締役とお話ししたかったからです…!//////」
なにこれ!?告白!?みたいなノリでアリは叫びました。
クマバチ取締役は怪訝な顔をしましたが、アリを無視するようにそばをすすりました。
アリ「ぼ、僕は今年入社したばかりで、キャリアに悩んでいまして、ぜ、ぜひクマバチ取締役にお話を聞けたらと思いまして…」
クマバチ取締役「…どこの配属だ?」
アリ「あっ、はい!茨城工場です!」
クマバチ取締役は、へらっと笑いました。
クマバチ取締役「残念だったな」
アリ「え?」
クマバチ取締役「お前は最初から期待されていないってこと」
アリ「!?!?!」
そう言ってクマバチ取締役は、そばを食べ終わり、立ち上がろうとしました。
アリ「待ってください…!?期待されてないって…!?」
クマバチ取締役「…」
アリを一瞥するとクマバチ取締役は、立ち去っていきました。
アリ『期待されていないって…!?一体どういうことだ…!?』
アリ美「配属先でもうその先の出世が決まってるってことよ」
アリ「わあ!?!?」
いつの間にかに、アリ美先輩が目の前に座っていました。
アリ「先輩!?どうしてここに!?というかいつの間にそこに座ったんですか!?」
アリ美「OL生活が長すぎて空気を読んで気配を消すのが得意になっちゃって…。ちなみに私も研修で東京本社まで来たのよ」
アリ「あ…はあ…そうだったんですか…」
社会人生活が長すぎるのも考え物だなとアリは思いました。
アリ「それで配属先で出世が決まってるってどういうことですか?」
アリ美「この会社は入社した瞬間から出世ルートが決まってるのよ」
アリ「!?!?!」
アリはアリ美先輩の言葉に耳を疑いました。
アリ美「みてごらんなさい。この会社の本社の部長クラスは、早慶、旧帝大卒しかいないのよ」
アリ「え…!?えぇ!?!?!」
アリ美「関西大学卒の部長がいるけど、彼も3年後には子会社の取締役に出向になるわ」
アリ「な…なんだって…?」
アリ美「人事があなた向けのキャリアルートを設定してて、何年いたらどこに行くかを全部決めてるのよ。ちなみに出世ルートだと、奥多摩工場配属から始まるわ」
アリ「く、腐っても東京…!!」
アリは愕然としました。
アリ『なんだこの会社は…入社時点で社会人人生が決まっているなんて…確かに俺はずっと周りの目を伺い、やりたいことも主張せず、ただただ従順だった…。これで正解だったんだ…。俺の意志なんて最初から必要じゃなかったんだ…』
アリは拳(?)を握りしめました。
アリ「なんてくそな人事制度だ…会社の都合で勝手に将来を決められて…僕にはまだポテンシャルがあるかもしれないのに…!俺はただの従順な働きアリじゃない!」
アリ美「いや働きアリだろ」
ぴしっとアリ美先輩に突っ込まれながらも、アリはその日の社食の味はやけにしょっぱく感じたのでした…。
送別会
工場研修を終えたアリは、送別会をしてもらえることになりました。
送別会といっても、この後は茨城工場に隣接する事務所で、総務の仕事になるわけなのですが…。とはいっても、アリは自分が工場の仕事が向いていないと思っていたので、この異動はありがたく感じていました。
アリ『とはいえ、茨城支店の総務をやった後、東京に異動にはなるんだけど…』
このままのルートでは、駅で突き飛ばされてまた死ぬのは目に見えています。
アリ『なんとかしなければ…」
アリがそう考えていると、送別会の飲み会の後、
セミ班長「おい!アリ!キャバクラ行こうぜ!おごってやるよ!」
アリ「えっ。い、いや///ぼくはキャバクラなんて…///」
アリ「え…いや…」
そのままアリはずるずるとキャバクラに連れていかれました。
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
薄暗いキャバクラに連れられて、アリがドキドキしていると、
???「よろしくお願いします~」
とふわっと雌のキャバクラアリがアリの隣に座りました。
アリはいい匂いにどきりとしましたが、
アリ「!?!?!?」
次の瞬間にはわが目を疑いました。
アリの隣に座ったのは、アリに高額英会話教室を契約させたあの営業アリだったのです!!
詳しくはこの記事を読んでください。
アリ「き、君はあの時の…」
キャバアリ「え?」
アリ「き、君、本屋で英会話学校の勧誘してなかった…?」
キャバアリ「あっ」
キャバクラアリは驚いたように口に手を当てました。
そして、そっとアリの耳元に口を近づけると、
キャバアリ「内緒にしておいてください」
とささやきました。
アリ「な、なんで…?」
キャバアリ「昼職だけじゃ食べてけなくて…」
うふふと照れくさそうにキャバアリは笑いました。
アリ『ひ、昼職だなんて…もう業界人(?)みたいなことを言って…』
その瞬間、アリはどうしようもない悲しみに襲われました。
アリ『君は…橋本環奈みたいにかわいくて…大学も出てて…英語もしゃべれるのに…なんでこんな…職業に貴賤はない…でもお金が欲しいならもっとやり方があったんじゃないか?
だが、それは俺も知らない…』
ぐっとアリは目頭を押さえました。
キャバアリ「えっ?大丈夫ですか?」
アリ「大丈夫、目にゴミが入っただけだから…」
アリはそう言って、トイレに行くふりをしてキャバクラを抜け出しました。
空を見上げると、星空が見えます。
茨城の空は東京より、明るいのです。
アリ「俺は…知りたいんだ。会社に左右されるんじゃなくて、自分がどうしていきたいか。才能のある人がどうやってその才能を生かすことができるか、そういうものを知りたいんだ。今の俺は何も知らなすぎる…勉強しなくちゃ…」
アリはそう、水戸の空に誓うのでした。
to be continued(て~ろてろてってろ~)
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