【前回までのあらすじ】
アリはもう一人のタイムリープ者アリ美に出会った。そして、ずんずんさんはタイトルが「アリとキリギリスなのに、キリギリスが出てないじゃん!?」と気づいてはいけないことに気づいた。
第一話→老後に2000万円必要な時代のアリとキリギリス
第二話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス
第三話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス その2
第四話→終身雇用制度無き時代のアリとキリギリス その3
在りし日の友
タイムリープを繰り返すアリは、タイプリープを止める鍵は、
「なにかやりたいことをやる」
ことではないかと気が付きました。
アリ「俺にはやりたいことがない!」
アリはもんどり打ちました。
アリ「どうしたらいいんだ…そういえば就活の時もこれで悩んだんだよな…」
アリはため息をつきました。
アリはタイムリープを2回して、社会人経験は12年になっていました。
当たり前のように働き、給料をもらう
ということが、いかに大変か骨身にしみついています。
昆虫には骨はありませんが…。
アリ「ともかく、今の会社にいちゃダメということだけはわかっている…。しかし、やりたいこともなければ、そもそも何ができるかもよくわからない…とりあえず棚卸をしてみるか…」
そういいながら、アリは自分のスキルの棚卸をしてみることにしました。
自分が何ができるか=スキル
そしてその「できること」がお金になるか=マネタイズ
この2点を考えていくのです。
世界は資本主義という宗教にとらわれています。
商品(サービス)があり、そこに価値があり、その価値が欲しいという人がいるから経済が成り立つのです。
と、するならば、アリも自分が提供できるサービスを見つけ、そこに価値を見出さなければいけません。
その価値が高ければ高いほど、対価としての給料も高くなるのです。
関係ありませんが、経済がよくわからず大人になってしまった人はぜひこの動画を見てください。30分であなたの人生が大きく変わるはずです。言い過ぎた。。。
アリ「今の俺には何ができるんだろうか…」
アリは新卒4カ月目の自分のスキルを棚卸してみました。
・地方国立大学卒→結構頭いいじゃん!
・大手メーカー勤務→箔がありそう!
・工場研修中→配属ガチャ大失敗!
アリ「研修中だから、ここから価値を高めていくっていうのも難しいよなぁ…」
アリはさらに書き出していきました。
・社会人としての新卒としてはなかなかのもの(というかタイムリープしているし…)
・目に見える成果がない
アリ「…そうなんだよな…俺には『これが俺の成果です!実績です!俺を高く買ってください!』ってアピールできるところがないんだよな…これから作ってくしかないんだけど…どうやって作っていけば…」
アリが頭を抱えていると、ピロンっとLINEが届きました。
高校の時の同級生だったコウロギからです。
コウロギは高校を出て、地元で就職して働いていました。
アリ「今思えば、高校を出てすぐ就職とか偉いよなぁ…」
コウロギは、出張で茨城に来るというのでアリに会いたいとのことでした。せっかくだからアリも会うことにしました。
鳥貴族
二匹は鳥貴族で落ち合うことにしました。昆虫が鳥貴族を利用しているあたり、もうわけがわからないなと書きながら思うのですが、二匹が会うのは高校卒業以来でした。
コウロギは高校の時よりもハツラツとしているようでした。
コウロギ「仕事は大変だけど、俺もやりたいことがあるからさっ☆」
そう言うコウロギをうらやましく思いました。
アリ「へぇ~いいな~。俺なんてやりたいことなくて…どうしたらいいかわからないんだ」
へへっとアリは卑屈そうに笑いました。
コウロギ「そうかぁ。俺もそうだったんだよ」
コウロギはうんうんとうなづきました。
アリ「えっ?そうなのか?」
コウロギ「そうだよ。何がしたいかわからなくてさ。仕事も高校推薦で就職しただろ?別に興味があった仕事なわけでもないんだよな…。だからどうしたらいいか悩んで、いろんな人に出会って勉強したんだ」
アリ「へ~えらいなぁ」
コウロギ「そうだ!アリにぴったりな勉強会があるんだよ。参加してみない?きっと何かつかめると思うよ!」
アリ「勉強会ねぇ…」
家でうじうじ悩んでいるよりも、気晴らしになるかもしれないな、とアリはコウロギが誘ってくれた勉強会に参加することにしました。
勉強会
その勉強会は東京の大きなセミナールームで行われました。
会場には300匹近くの虫たちがいたでしょうか。
アリは気分転換程度の気持ちで参加したので、その勉強会がそんな大規模なものだとは思いもしませんでした。
そして、そのセミナールームの雰囲気はやや異常でした。
そう…そこにあるのは
熱狂
そこには確かに熱狂があったのです。
登壇したカマキリがマイクを振り上げこう叫びました。
カマキリ「これからの時代は会社に頼ってばかりでいけません!見てください!破綻した年金制度!子供への虐待、貧困!これが私たちが望んだ社会でしょうか!」
おぉっと会場がどよめきました。
カマキリ「お金はあっても困りません!私たちの多くはお金を何か汚いものだと勘違いしています!何か悪いことをしたからお金持ちになったんだ、だとか、そんなお金を稼いだら罰が当たるとか!そんなことはないんです!お金があれば、あるほど人を助けられる!見てください!」
会場のプロジェクターに、東南アジアのどこかの村の様子が写されました。
カマキリ「ここの子供たちは、小学校に通うまで3時間かかります。小さい子が荷物を背負って3時間歩かなければいけないのです。水道もありません。だから!私は!この村に小学校をつくりました!」
おぉ!!とさらに会場がどよめきました。
カマキリ「これからこの村に水道を引きます。いいですか!お金があれば誰かを助けられるんです!!」
自然と拍手がわきおこりました。アリもつられるように拍手をしました。
カマキリ「だから皆さん、会社の仕事だけじゃなく、何か小さなことからでもいい、ビジネスをはじめてください!投資でもいい、せどりでもいい、ほんの小さな一歩が誰かを救うんです。私はこのビジネスをはじめて15年です。15年の間多くの仲間が集まり私を助けてくれました。ぜひあなたもその一員になってください!」
アリ『ん…?』
この辺からアリは違和感を感じはじめました。
カマキリ「私たちのビジネスには在庫がいりません!」
アリ『んん…?』
アリはそっと隣に座るコウロギを見ました。コウロギは目をキラキラ輝かせながら壇上のカマキリを見ています。
そうして、カマキリのビジネス内容の説明が始まりました。
スライドには下記のような図が写しだされました。
アリ「…」
察しのいいアリは、ここですべてわかってしまいました。
そう、これはネットワーキングビジネスの勉強会だったのです。
アリは目を輝かせているコウロギをそっと見ました。
そして、目を固くつぶり、共に過ごした高校時代を思い出しました。
部活の後、部室でみんなで何気ない話をして、盛り上がったあの日々…。
あの夏の日差しをアリはまだ覚えています。
アリ『それも、もう戻ってこない…。』
アリは立ち上がると、
コウロギ「どうした?」
アリ「トイレだよ」
そう言って、会場を後にしました。
本屋のあの子
アリ『あ~…時間を無駄にした…』
アリは謎のダメージを受けて、茨城の水戸に戻ってきました。ここから電車で30分ぐらい行くと会社の寮があります。
アリ『まさかコウロギがネットワークビジネスにはまっているなんて…がっかりだよ。でもこんな展開は前のタイムリープにはなかったな…?』
アリ美先輩に出会ったことで、何かが変わってきたのかもしれない…。
アリはそう思いました。
コウロギのネットワークビジネスは、アリのものではありませんでしたが、コウロギが言っていた「いろいろ勉強してやりたいことを探す」ということにはアリは共感しました。
アリは今までそんなことを考えてもいませんでした。
アリ「勉強するか…」
ふとそう思い、アリは駅前の本屋に立ち寄ることにしました。
そういえば、働きだしてからというもの本をちゃんと読むということをしてこなかったなぁ~とアリがぼんやりと考えていると
???「あ、あの…」
アリ「?」
店の前でアリは、若い雌のアリに話しかけられました。
橋本環奈に似ている黒目がちなとてもかわいいアリだったので、アリはドキッとしました。
???「英会話学校のイーヤンです!英会話に興味ありませんか!」
アリ「えっ。あ、いえ」
どうやら、彼女は書店前で語学学校の勧誘をしている営業のようでした。
営業のアリはさらに続けます。
営業アリ「いまなら入会金無料なんです!」
アリ「え……すいません…興味なくて」
アリは彼女の勢いにちょっと引いてしまいました。
営業アリ「あ…そうですよね…すいません」
アリ「……」
営業アリの女の子は、ふうううと深いため息をつきました。
今にも死にそうな顔色です。
アリは前のタイムリープで営業をしていたので、営業のつらさはよくわかります。
しかも、とてもかわいいアリが死にそうな顔をしているのです。
なので、
アリ「あの…どうしました?」
と、つい話しかけてしまいました。
営業アリ「……!あ、すいません…。私、この仕事を初めてちょうど3カ月なんですけど…全然契約が取れなくて…」
しょぼんと営業アリは続けました。
営業アリ「この仕事って歩合制なんです。契約が取れないと基本給の13万円で暮らさないといけなくて…」
アリ「13万円…!?」
すくなっ!とアリは思いました。
営業アリ「税金とか取られちゃうと全然すくなくて…暮らしてけないって思うんですけど…私の地元って全然仕事がなくて…こんな仕事でも正社員だし…って思って続けてるんです…でも、学生時代のバイトで貯めた貯金もなくなってきちゃって…」
アリ『……』
そんなけなげなこと、言われたら…俺は…。
そんなこと、言われたら…
そんなこと、言われたら…!!
こんな気持ちになっちゃうだろう!!!
とアリは悶えました。
そんなアリの気持ちにも気づかず、彼女は続けました。
営業アリ「語学学校って高いですよね。でもローン組めるんです。私、大学の時、英文科で、英語が話せるっていろんな国の人たち(※昆虫)と交流できて本当に楽しいなって思ったから、みんなにこの楽しさを知ってほしいって…この仕事をはじめたんです…でもやっぱり向いてないのかな…」
ふふっと営業アリは寂しそうに笑いました。
だから…!!
そんなこと、言われたら…!!
ダメだ!とアリは理性は叫びました。
ですが、目の前のいるアリは、
橋本環奈のようなかわいいアリだったのです…!
その女の子が、契約をとれないと悲しんでいる…
だったら…!!!
俺は……!
☆☆☆ ☆☆☆ ☆☆☆
営業アリ「ありがとうございます~!!!」
アリ「え。あ、いえ…はは…」
気づくとアリは、12カ月英会話コース(※36万円:ローン36回払い)に入会していました。
営業アリ「ありがとうございます~!これでお米が買えます~!」
アリ「え…へへ…あ、うん…」
その代わり、しばらく今度はアリがお米が買えなくなりそうです。
こうやって経済は回っているのだ…。
しかしながら、この英会話学校がアリの人生を変えることになるとは、この時は思いもしなかったのです…。
to be continued(て~ろてろてってろ~)
キャリアで悩んでいる方はぜひコーチングを受けてみてね!