【前回までのあらすじ】
タイムリープをしたアリは、冴えない営業になったが、ルート選択間違え、またタイムリープしてしまったのだった…。
終わる気がしない。
出会い
カキーンと快音がして、白球が青い空に飛びました。
今日は会社のソフトボール大会です。
河川敷の野球場のベンチで、アリは死んだような目で試合を眺めていました。
アリ『はぁ…またタイムリープしてしまうなんて…。俺は、12年も社会人やっていることになるのか…』
社会人12年目というと34歳ぐらい…会社で言えば立派な中堅のおっさんです。
外見は新卒、中身は中堅という、まるで某名探偵のようなギャップをアリは抱えているのでした。
アリ『一体どこでルートを間違えたんだろう…』
アリがそう考えていると、目の前の試合では敵のチームの四番打者が打席に立ちました。アリがこの試合を見るのも三回目です。結果なんてとっくのとうに分かっていました。
アリ「ここから、2ストライクからの1ボールで、逆転ホームランで、俺たちのチームは逆転負け…」
ふぅっとアリがため息をつきながらつぶやくと、
???「!!!!」
アリ「?」
近くに立っていたアリ美先輩が、持っていたペットボトルを派手に落としました。
アリ「え、大丈夫ですか?」
アリが何事かと、アリ美先輩が落としたペットボトルを拾おうとすると、
アリ美先輩「あなた…もしかして…」
アリ「?」
アリ美先輩「今、何回目…?」
信じられないものを見るかのように、アリ美先輩はアリを見ながらそう言いました。
アリ「!!!!」
アリはその時すべてを察しました。
こ…これは…!!
もう一人の、タイムリープ者だ!!!!
そう、タイプリープものには必ず
もう一人タイムリープしている人間(※昆虫)が現れるものなのです。
そう…オール・ユー・ニード・イズ・キルのごとくです。
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アリ「ま…まさか…アリ美先輩も…?」
アリ美先輩は、工場管理部にいるミステリアスな美人なアリとして有名でした。
そのアリ美先輩が、自分と同じようにタイムリープしている…?
アリ美先輩「…今日この後の打ち上げの飲み会で20時46分に焼酎を飲みすぎたカナブンが倒れる。その混乱に乗じ飲み会を抜け出し、駅の裏手の喫茶店で待っているわ」
アリ「…!」
喫茶ルノアール
夜の喫茶店には人気は少なく、ちょうど入り口から隠れるような席にアリ美先輩は座っていました。
アリ「…僕は2回タイムリープしています。これで3回目です」
店員が水を置き、離れるのを見計らってアリはそう言いました。
アリ美「そう…私は5回目よ」
アリ「ごっ…!!!!」
アリは衝撃のあまり息が詰まるかと思いました。
アリ美「この6年間をもう5回もやっている」
アリ「もう30年っすか…とんでもないっすね…」
アリ美「…日本にいるのがよくないのかと思って海外にも移住した…。アメリカでマリファナふかしながらサーファーにもなったけど、それでもまた6年前に戻ってきてしまう…」
アリ「大分、ぶっ飛びましたね…」
アリは軽くドン引きしました。
そんなアリを横目に、アリ美は続けました。
アリ美「…アリ君はどうしてこの会社に就職したの?」
アリ「え?僕は…その…お恥ずかしい話ですが、内定をもらったからこの会社に就職したんです」
アリ美「そう…私と同じね。私はピーマン・ショックの後に就職したの」
アリ「ピーマン・ショック?」
ピーマン・ショックとはウキペディアの言葉を借りるなら、
アメリカ合衆国の投資銀行であるピーマン・ブラザーズ・ホールディングスが経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象を総括的によぶ通称
です。
こんなウキペディアは存在しませんが、ピーマン・ショックの後は、新卒採用も冷え込み、内定取り消しもあったとかなんだとか…アリは聞いたことがあります。
アリ美「ピーマンの後、私、あんまり要領がよくなくて、全然内定をもらえなくて…それで結局実家に戻って、実家から通えるこの会社に就職したの。転職しよう、転職しようと思ってて…結局、転職もせず出会いもなく独身でこの年まできちゃった。だから正直、タイムリープできたとき、人生やり直せる!ってうれしかったの」
アリ「……」
アリ美「でもダメなの。いつも戻ってきてしまう…」
ふうっとアリ美はため息をつきました。
アリ美の失望感は、アリも他人事ではありませんでした。
重い沈黙が続いて、アリが口を開きました。
アリ「…どうしたらこのタイムリープから抜け出すことができるんでしょうか」
アリ美「わからない…ただ…ずっと感じてたことがあって」
アリ「感じてたこと?」
アリ美「5回のタイムリープで、丸の内OLになってみたり、サーファーになってみたりいろいろなことをやったんだけど…いつもいつもこれじゃないって感じていたの」
アリ「これじゃない?」
アリ美「……アリ君は感じたことがない?」
アリ「…」
アリはアリ美に痛いところを突かれた気がしました。
アリは2回目のタイムリープを経て、12年うだつの上がらないサラリーマンをやり続けていました。
その間ずっと、この選択でよかったんだろうかと思い続けていました。
もっといい選択肢があったんじゃないだろうか。
これじゃないんじゃないだろうか。
毎日のようにそんなことを考えていました。
アリ美は続けます。
アリ美「どうせ、またタイムリープを続けるなら、今度は本当にやりたかったことをやってみようと思うの」
アリ「本当にやりたかったこと?何ですか?それ?」
アリ美「漫画家になる」
アリ「えぇ!?先輩、漫画描けるんですか!?」
アリ美「描けないわ」
アリ「えぇ!?!?」
アリ美「私、子供のころは漫画家になりたかったの。でも、親にそんなので食っていけるか!って言われて、絵を描くこともやめてしまって…。どうせ、タイムリープするなら、思い切って漫画家目指して、どうせだめでも悔いはないと思うわ!!」
アリ「え…えぇ~…」
罪と罰
アリ「アリ美先輩は変な人だった…」
寮に帰って、アリはふーっとため息をつきました。
漫画を描いたことがないのに漫画家を目指すなんて、突拍子もないことないことだとアリには思いました。いくら小さいころなりたかったからって…。
アリはそこで、ふと自分のことを思い返しました。
アリ『俺は小さいころに何になりたかっただろう?』
小さいころ、野球選手になりたいと言っていたような気がします。
しかし、それは本当になりたかったわけではなく、周りがそう言っていたから、アリもなんとなくそう言っていました。
進学も、大学は出た方がいいと思い、親に迷惑をかけないよう地方の国立大学を選びました。経済学部でしたが、特に経済に興味があったわけではなく、数学が苦手だから理系は選ばず、法学部の偏差値にはとどかなかったので、いわば消去法で選んだようなものです。
そして、就職もジャパンはモノづくりだと良く聞いていたのでメーカーに就活して、たまたま内定をもらえたので今の会社に勤めています。
アリ「あれ…?俺には、やりたいことがない…?」
そこでアリはハッとしました。
1回目のタイムリープの時、アリはキリギリスの真似をしてIT企業に入ったわけで、特にITに興味があるわけではありませんでした。
アリ「俺は…ずっと流されづづけている…?自分で『何かをやりたい』って決めてきたわけじゃない…?もしかしてこのタイムリープは…」
自分の人生を真剣に考えてこなかった人間(※昆虫)への罰ゲームなのか…?
アリ「…とすると俺は、やりたいことを探さなきゃいけないのか!?な、なにもないぞ!?!?」
アリは今度こそ、正しい選択肢を見つけだせるのでしょうか?
to be continued(て~ろてろてってろ~)
キャリアで悩んでいる方はぜひコーチングを受けてみてね!